《史倉市 路上》


裕晶は徒歩で通学している。家から学校まで歩いて約30分。自転車通学も考えていたが、交通ルールが厳しくなったという話を聞いてそんな気は失せてしまった。


「何か勘違いしてるみてぇだけど、別に俺は学校から出れないって訳じゃねぇぞ」


校門を出て歩き出してから数分。ゴトウが裕晶の疑問に対する答えを述べた。


「俺が瑚堂にいないことに不具合がないって訳じゃねぇけど、かといって座敷童子の話によくあるような、その家――建物が落ちぶれてしまうってことはねぇよ。そういうのは本当に、俺が瑚堂学園(おれ)を見限るまではないからな、安心しろよ」


「そう、なんだ」


どうやら自分は勘違いをしていたようだ。随分と驚いていた自分が少し恥ずかしくなり、裕晶はそれ以上何も言わなかった。


「まあ、俺がずっと外にいるにもいかねぇし、そろそろ戻るわ」


「あ、うん。判った。――ごめん」


「何で謝んだ?」


「ゴトウがさっき……長谷部って人だっけ?――に絡まれたの、僕のせいかなって思ってさ」