「え、いいの?」
ゴトウが立っている場所を見た裕晶は、思わず疑問の言葉を発した。
座敷童子だ、建物のそのものだ、擬人化だと言っていたゴトウが、その校内から出ていることに驚いた。二、三歩程度の距離とはいえ、裕晶には衝撃的な光景のように映る。
「『いいの?』って何がだ?いや、話すんなら場所変えようか。裕晶、お前帰るんだろ。歩きながら話すか?せっかくだし、途中まで一緒に行ってやろうか」
「え、いいの?」
再び同じ言葉を発してしまう。ボキャブラリーがないというのではなく、純粋な思いがそのまま口に出てしまった。
一先ず自分の疑問を置いておき、ゴトウと一緒に歩き出すことにした。三人の男子生徒がいる中で話すことではないというのは裕晶にも判断出来るし、何より痛みに呻いている人がいる所で話はしたくない。
自分が仕出かしたこととはいえ、自然な感覚である。


