「ん?」と裕晶の言葉に反応したゴトウは、続いて「うわッ」と驚きの声を漏らしながら無理矢理に立たせられる。長谷部が、起き上がると同時にゴトウの襟元を掴みながら立ち上がったからだ。
二人を引き離そうとする裕晶だが、後ろから誰かの息遣いが聞こえたため振り返る。そこには鼻血を流した跡を残す熊崎の姿があった。
「おい、ちょッ!?」
戸惑いの声を上げる安東を尻目に、熊崎は裕晶に、長谷部はゴトウを相手に一悶着起こそうとしている。
往生際が悪い。昨日の大野といい、黙ってやられるのは不満だという者が多いのか。だが、元はと言えば、あんた等が悪い。そう思う裕晶は、今度は容赦せずに立ち向かう。的確に急所――鳩尾を狙って正拳突き。熊崎は苦悶の声を漏らし、膝から崩れ落ちた。
そして裕晶がゴトウと長谷部の方を向いた時。ゴトウが突き飛ばされ尻餅をついた。長谷部がゴトウに手を伸ばしたところで裕晶の静止が入った。手首を掴み、自身に引き寄てから肘で喉を突く。
これでいいだろう。裕晶は一息つき、ゴトウの方を見る。ゴトウは尻をさすりながら立ち上がる。
彼は、校門から外に出ていた。


