男子高校生と男子高校生もどき


緊張感なく繰り広げられる二人の会話。それを黙って聞いていられない者がいる。


「ダアッ、クッソッ」


裕晶に殴りかかる長谷部。しかし、ただ勢いをつけただけのものに臆することはない。僅かに身体を動かして躱した裕晶は、擦れ違いざまに右手と右足を使って長谷部を転ばせる。


次はどこを蹴ろうかと考えたところで、今回はただ絡まれただけで怪我を負わされたのでも物に被害があったことでもないことを自覚し、それ以上はもういいかと思い、止めにした。


安東は呆けた顔をして黙っているだけの状態となったので、無視することにした。


「これに懲りてあんまり馬鹿やんなよ?あと後でお礼参りすんのも止めとけ。まあ下級生にお礼参りなんて、恥ずかしくて出来ねぇか」


立ち上がろうとする長谷部の傍らに、ゴトウがしゃがみこんで忠告をしていた。言い終わった後に顔を上げたゴトウと目が合い、何か言おうと口を開く裕晶は、目に飛び込んできた光景を目の前にして「あ」と一言漏らす。