「容赦はしたよ。いつもより手加減はした。爪先じゃなくて足の裏全体で蹴ったしさ。にしてもゴトウ、どうしてここに?」
校舎を出ているとはいえ、裕晶はまだ校門を出ていない。ならば裕晶の身に起こったことは、ゴトウが知っていて当然だろう。判らないのは、なぜわざわざ姿を現したのかだ。
「何でってお前、友達が悪い先輩に絡まれてたら心配するだろ?」
「……心配?」
「裕晶が先輩相手に喧嘩しようとしてたら面白そうだと思うだろ?」
裕晶の冷静な一言に喋り直すゴトウ。だが本当は、そこに関心はない。
友達――?
ゴトウの言った単語に何とも言えない感覚が生まれる。
冗談だと、言葉のあやだと受け取るべきなのだろう。だが、言葉として言い表されたそれには、裕晶の感情を揺さぶる効力があった。
妙なところで感情的になっている自分がいることに気付き、裕晶は後ろめたさを感じてしまう。


