裕晶は早速目の前にいる先輩に足払いを掛け、そしてバランスを崩して倒れる彼の顔面に蹴りを入れようとして――
「昨日の今日ですげぇな、裕晶」
突如聞こえたその声に驚いたが、身体は止まらなかった。裕晶の蹴りは男子生徒の顔面に綺麗に決まった。
痛みに呻く声と、困惑する声。それらよりも響くのは、裕晶の傍らに立つゴトウの呟き。
「容赦ねぇな、本当に」
苦笑いを浮かたゴトウは、目の前の様子を気にせずに裕晶に向かって世間話をする。
「こいつら三人バスケ部なんだけど、見ての通りサボり系男子だな。まあ実力はそれなりなのかな。でもこんなんだから試合にはあんま出してもらえてねぇんだよな。ウチのはチームプレー優先だから」
「はあ?お前いきなり何?てか蹴っ――蹴りって何?え?」
彼等にとって予想外の展開が続き、混乱しているようだ。一人は声を向ける相手をいきなり現れた男子生徒か、顔面に蹴りを入れた男子生徒のどちらにするか判らず、顔を何度も左右に振って二人を見ている。
そこにいるのが当たり前である座敷童子でも、突然話し掛けてきたら相手は戸惑ってしまうようだ。裕晶の場合と違い、話し掛ける順序の最初が抜けているのだから。


