裕晶は校門を出て右へと進む。だから左側に寄って歩くことはせず、真ん中を歩くようにする。変にゆっくり歩く訳にはいかず、かといって早足するにもいかない。普段通りに歩く。
そして、彼等と横に並ぼうとした時――
「あ、ちょっとちょっとお前さぁ」
一人の男子生徒が裕晶に向かって話し掛けてきた。裕晶の方に数歩近付いてのことで、仕方なく裕晶は立ち止まり彼等の方を向く。
「こいつさっき、遠野と一緒に図書室いた奴じゃね?」
話し掛けてきたにも関わらず、仲間に向かって喋りだす男子生徒。
そして裕晶はその発言を聞いて、一つの確証に近い仮説を立てる。
さっき図書室を覗いていた人達――?
それならば、遠野という名を出して裕晶に話し掛けてきたのは判る。裕晶にとって明は変わった先輩であるが、ゴトウの話を聞くに、多くの人から遠巻きにされるタイプであることは判る。そしてそれは、虐めに繋がることだ。


