裕晶は図書室を出て玄関へ、明は図書室の鍵を返しに事務室へ、ゴトウはそんな二人を見送ってからどこかへ行った。
吹奏楽部が演奏する楽器の音が聞こえたり、どこかの部活動による掛け声は、普段帰りのHRが終わってすぐに帰宅する裕晶にとって、聞くことのないものである。
そんなBGMを聞きながら、裕晶は繰り返し作業を行う。昇降口で靴を履き替え、玄関を出る。誰もが行う通常のこと。ただ、今それをしているのは裕晶だけだった。
先を見ていた裕晶は、僅かに歩幅を狭める。向かって右側の門柱の側に男子生徒が三人いた。
彼等を見掛けで判断するならば、軽薄そうな連中。制服のブレザーの下にパーカーを着ている者や、髪を染め、お洒落にセットしている者。
わざわざ校門で立ち話をしていること自体に裕晶の不審は芽生えるが、第一印象からくる偏見により一層の警戒心も沸き起こる。
高校生になって二ヶ月で虐めを経験した裕晶にとって、敏感になる出来事だ。


