そして裕晶は考える。
先程までの話の流れから、会話を広げることを目的としよう。そう、目的があれば考えやすい。さて、どんな話題がいいだろうか。
好きな食べ物、嫌いな食べ物について訊いて、答えてもらったとして。裕晶は、明の返答によっては「そうなんですか」の一言で終らせてしまう予感があった。そんな可能性があるならば、この質問は得策ではない。
ならば趣味を訊くのはどうだろうか。明は図書委員であるから、読書は好きなのだろう。ならば自分と話が合うのでは――いや待て。自分が好きな小説のジャンルはミステリーだ。例えば明がファンタジーを好むとしたら、やはり裕晶は会話を広げることは難しい。
裕晶としては、興味のない会話を続ける気にはならない。相手がその話題を提示したのならば構わないが、自分から会話を持ち掛けるのならば、自分に興味があるもので。相手のことを考えても、上部だけの感想や意見は意味がないと思っている。その相手にも申し訳ないから。
ならばいっそ、最近の時事問題はどうだろうか。いいかもしれない。それならばお互いが意見を言い合えるはずだ。明も知っているであろう話題。よし、決めた。


