「んじゃま、行くか。準備出来てるみてぇだし。てかスポーツバッグてよ、見た目に合わねぇってこと判る?どっちかってぇとリュックか普通の革鞄の方が似合う――はいすんません言い過ぎましたさっきの発言ほぼカットで宜しく」
身長160cm弱の裕晶より、彼は10cm程高い。裕晶は目線を上げて彼と視線を合わせる。目で会話が出来るとは思っていなかったが、意を汲んでくれたようだ。
彼が言いたいことは判る。帰宅部がスポーツバッグを使用するというのは、意外とか珍しいとか。しかし裕晶にとっては馴染む物で、ましてや人にどうこう言われる筋合いはない。
「それじゃあさっさと行こうか」
図書室の場所は知っている。バッグを肩に掛け、言い終わると同時に歩き出す。慌てた様子で彼が後を追う。
「いきなり過ぎんぞ」と不満げな言葉を漏らす彼の横を歩きながら、裕晶はまず一つ、疑問を問う。
「先に訊いておきたいんだけどさ、名前、何ていうの?」
最初の、何よりも重要な問いに対し、彼は前を向いたまま口許に笑みを浮かべて答えた。
「通りのいい名じゃ"座敷童子"。でもそれは俺の名前じゃないから、ゴトウ、もしくはゴトーって呼んでくれ」


