あれは何だったんだろうと思いながら、校門まで歩いて行く裕晶。
また明日来るって言ってたけど、話すことっていっても、こっちからはないよね。訊かれたことに答えるぐらいだったら、出来るけど。そういえば、名前訊いてなかったな……え?
「え?」
心中の思いがそのまま言葉になり、裕晶は校門を出た一歩のところで立ち止まる。
あれ、何で……。
思わず校舎の方を振り返る。視線の先には、校舎から出てくる生徒がいるだけであり、裕晶の思考の助けになるものはない。
裕晶の感情は今、驚きと衝撃のみで構成されており、その原因となるのは一つの疑問からであった。
それは、ついさっきまでは全く気にもしていなかった、しかしとても重要なことだ。
裕晶は、あの男子生徒に名前を訊かなかった。
訊こうとしなかった。
訊こうとする考えがなかった。


