必要な物をバッグに入れ終え、さて帰ろうかとバッグを肩に掛け出入口の方へ体を向けたら、教室の扉近くに立っている一人の男子生徒と目が合った。
「よッ、立岡裕晶君」
そう言いながらヒョイと片手を上げ、害はないというように笑みを浮かべた彼は、裕晶の元に近付いてくる。
「ちょっとお前と話したいなあって思ってよ、こうしてわざわざ来たんだが、いいか?てかいいよな。どうせこれから急ぐような用事なんてないだろ?」
「…………ないけどさ」
馴れ馴れしい口調で話し掛けて来た。裕晶の都合は気にせず、自分の用件を済ませようとする。
「んじゃ、玄関まででいいからよ、ま、歩いて駄弁りながら行こうや」
「……いいけどさ」
裕晶の返答で話は決まったとばかりに、勝手な決定事項を口にする。確かに急ぎの用事はないから、断る理由はない。だから裕晶は何もそれ以上何も言うことはなく一緒に歩き出す。
「安心しろよ、『面ァ貸せや』的なことにはなんねぇから」
「ああそう」


