「ごめん、谷川(たにかわ)君にお願いがあるんだけどさ、購買行って何か買ってきてもらってもいいかな。バッグさ、汚れちゃってそれ片付けなきゃいけないんだけど、昼食買いに行かなきゃならないしでやることが多くてさ。本当に申し訳ないんだけど、お願いしてもいい?」
そう言ってものを頼む裕晶の顔には、今まで見せていた無表情ではなく、申し訳なさそうな感情が浮かんでいる。
こいつも表情、あるんだな。てか以外と声低いんだな。
先程裕晶がしたことに対する衝撃が残っている谷川は、どこかずれた思いを抱くが、それを口にすることはなく、ましてや彼の頼み事を断ることもしなかった。
「あ、ああ。判った。何がいいとかってのは――」
「いや、何でもいいよ。パンやおにぎりを二つ、あと飲み物なんだけどさ、小さいサイズのお茶と、もう一本……谷川君のお勧めの、お願い。――これ、財布。この中にある金額以内で、ごめん、よろしく」
「判った。じゃあ……」
裕晶から財布を受け取り、立ち上がって早足で教室を出る谷川。裕晶は谷川の姿を見送ってからバッグの掃除を始めた。


