玄関に着き、内履を脱いで靴箱へ。外靴を取り出して正面を見ると、ゴトウは既にローファーを履いて待っていた。
……もう驚かない。
外靴に履き替え、玄関を出る。校門まであと少し。
「ゴトウ」
「ん、どうした?思い出したか?ギリギリセーフだな。っていや待て、ひょっとしてこれは思い出せなかったってオチになるのか?」
ゴトウが軽口を叩きながら裕晶に顔を向ける。
裕晶はゴトウを一瞥し、一言述べる。
「ありがとう」
キョトンとした顔でゴトウが立ち止まったので、裕晶もそれに倣う。何故自分がお礼を言われているのか理解していない。本来、お礼を言うべきだったのは昨日のことだから、忘れても仕方がない。
「昨日の放課後、階段で、僕を突き飛ばした時のこと。お礼を言ってなかったからさ」
妖怪から身を守ってもらった。久方の話を聞く限り、それが目的だったらしいが――それでも、ゴトウが裕晶の身を案じて行動したのは確かな事実。
「あと、これからもよろしく」
出来るだけ自然に、さりげなく言おうとしたが、失敗した。誤魔化すように追加する。
「頼ることが多いかもしれないけどさ」
瞬きを数回。それからゴトウは呆気にとられたという表情に変化した。


