「瑚堂学園に通う生徒の中に、急にいきり立つ人が多くなった。それも、一日に数名も。それが異変でした。些細なことで逆上し、しかし一度落ち着くと、自分の振る舞いに疑問をもつ。それが特徴でした。結論から申しますと、それは『通り者』という名の妖怪が原因でした」
あっさりと妖怪の仕業だと言われ、裕晶は何とも言えない気分になる。その存在を否定することはしないし、異常と言える事態に対する答えとして納得は出来るのだが。だからこれは本当に、ただの気分の問題だと捉える。
「さて、『通り者』とは人に憑依し、心を乱す妖怪です。今回は『憤り』の感情を増幅させたようですね。座敷童子が瑚堂学園を出た隙に、入り込んでしまったのでしょう。ですが、先程退治しましたので、ご安心を。入り込んでいたのはあれのみでしたから。
……妖怪といいましても、その内訳は千差万別。『通り者』は、"形のない"というのが本来の姿。意識や感情に形がないように、『通り者』という『意識』に明確な姿がないのはのは当然の理です。ですから、立岡さんのように『見えない』のが正しいのです」
『立岡さん』と呼ばれ、ビクリとする。そう呼ばれることなど滅多にない。


