ゆっくりと深呼吸を数回してから、少年から手を放し立ち上がる。少年は裕晶をどうこうするつもりはないらしい。痛めた箇所を擦りながら起き上がる。
少年が裕晶に何かを言おうと口を開くが、その前に裕晶は、思わずといったように一言呟く。
「……ゴトウ」
溜め息のように吐き出された言葉だが、それはしっかりと"彼にも聞こえた"。
だから返事があった。
「どうした?裕晶」
裕晶の真横から聞こえた声。
顔を向けると、その声の主は当たり前のようにそこに立っていた。
茶髪に左耳のイヤーカフ、そんなチャラチャラとしたものは顔だけで、制服は真面目に着こなしている、アンバランスな印象のある男子生徒。
ゴトウが、変わらない姿でそこにいた。


