小柄な裕晶にはパワーはないが、その分スピードがある。反応する暇を与えずに叩き込まれたその蹴りは、少年を壁に叩き付けるだけの威力はあった。
「ウグッ……」
「あ、あんた……何で……」
感情の色が薄い裕晶の顔に、その時確かに怒りが見えた。
「事情を説明します。まずは落ち着――」
「これがッ落ち着いてられるかってーのッ」
少年は目を見開き、裕晶を宥めようとするが、相変わらずのゆったりとした語りは裕晶の怒りにガソリンを注いだ。
口調は荒く、興奮している。普段ならば――そもそも裕晶が怒るとすればそれは行動でのみ表され、こうして言動で怒りを表現することはなかった。
裕晶がこうして暴力を使うのは、相手が自分に突っ掛かってきて害を加えた時。それ以外――先日の蒲生の件では、争い事を収めるために使った。どちらの場合も裕晶は冷静に対処出来た。
だが今は違う。裕晶は今、ゴトウ(たにん)に対する被害に対してキレている。


