裕晶には判らなかった。自分を突き飛ばしたゴトウに白いものが重なり、そしてそれはゴトウの中に入ったことを。
「――あいッた」
距離が短く咄嗟のことで、避けることが出来なかった。それでも受け身をとったのは流石のことで、衝撃はあるがダメージは軽い。
突き飛ばされたことへの怒りよりも、いきなり何だという疑問の方が大きい。頭を振りながら上体を起こした裕晶の耳に、少年の言葉が入ってくる。
「ありがとうございます。これで捕捉しました」
階段では音がよく響く。例えば休み時間等では女子の甲高い声が痛いくらいに聞こえることがある。
少年の声は静かなものだが、閉じたこの空間でその声はよく響いた。
倒れているゴトウの傍らに片膝をついた少年は、手に持つ一枚の札を、ゴトウの身体に張り付ける。
「調伏」
凛とした声が、この場を浄める。


