よく見ると、壁に小さな紙が貼られているのが見える。それがお札と呼ばれる類いの物だと、何となく判った。
「結界か――俺の目の前でんなマネするたぁな。ま、いいさ。あの白い煙が原因なんだろ?たぶん。あとで事情を説明してくれんなら邪魔はしねぇよ」
裕晶よりは状況を理解しているゴトウは、少年の肩から手を放して壁際に寄る。少年は「承知」と一言応え、セカンドバッグからさらに札を取り出す。
何が起きているのか全く判らず、不安に襲われる裕晶。それでも取り乱したりしないのは、ゴトウの存在があるから。ゴトウのことは知っている。そのゴトウが少年の行動を肯定的に捉えているから、まだ安心出来る。
だが、何も知らないというのは、酷く恐ろしいことだった。
白いものは、裕晶の方へと向かって来た。
ゴトウが驚いた顔をして自分を見て、裕晶はただ疑問に包まれた。
どうしたのと聞くために、口を開いた裕晶の真横に、白いものが迫っていた。
「裕晶――――ッ」
名前を呼ぶ途中で、ゴトウの体は動いた。裕晶とゴトウの間の距離は短く、ゴトウが一歩踏み出しながら手を勢いよく伸ばす。裕晶はゴトウに突き飛ばされた。


