男子高校生と男子高校生もどき


「真証具現、道破出放」


何かを唱える少年を見て、これがゴトウの言っていた術というものなのかと思う。今、自分は何をするべきなのか見当もつかない裕晶は、成り行きを見守るしかない。


札を貼り付けられた男子生徒の身体から、白い何かが湧き出た。それは、水面に落としたインクのように空気中に滲み出る。


その様子が判ったのは、空中に顔を向ける二人。驚きの色を目に湛えながらも、口元にうっすらとした笑みを張り付けたゴトウ。そしてこの事態を引き起こした少年は、薄目を開けてそれを見ている。


反対に、裕晶の目には何が起きたのか認識出来ない。何もない空中に顔を向ける二人を訝しげに思う一方で、全く反応を見せなくなった男子生徒を不安に思う。


白いものが全てが放出された時、男子生徒は完全に気を失った。膝からガクリと崩れ落ち、裕晶はあわててその身体を支えて静かに床に座らせる。


ゴトウの「あ――」という声に反応し、訳の判らないまま彼の視線の先、階下の方に顔を向ける。


裕晶の目には何も映らない。だが、


「逃がしませんよ」


と少年の声が響く。その言葉通り、蠢く白いものは廊下と階段との境目から向こうに出ようとしない。