思った以上に突き放すような言い方になった自分に驚いて、口ごもる。
そんな私に一瑠は「え、」と間の抜けた声で聞き返してきた。

「……那智?」
「えっと、あの、ほら……伊達さんみたいに報道とかされたら困る、でしょ」

『これで岸本くんにも熱愛が出たりしたら、しばらく立ち直れませんよ、私』――お昼に美容師さんが口にしていた台詞を思い出し、咄嗟に言葉を足す。


そうだ。そうだよ。
私に会いに来たところを撮られたりしたら、きっと一瑠の仕事に影響する。

せっかく人気が出てきたんだから。彼にとってはこれからが大事なんだから。

私たち、ぜったい会わないほうがいい。


「大丈夫だよ。……万が一されても、付き合ってるのは嘘じゃないし」
「そ、そうだけど、そうじゃなくて……」

会いたいけれど会いたくない。……自分でもわけがわからない。この気持ちは。


ただ、もう私は違うな、って。
離れすぎたな、って。


ずっときみを見ていたいのに、きみはどんどん遠くへ行ってしまう。
それなのに、まだ私は動き出せていない。

諦めた私と諦めなかった一瑠は違う。
何もかもが、違う。


「……別れ、よっか」



――ねえ、きみは。

きみは私を置いて、どこまで行ってしまうのだろう?