画面の中に彼の姿を見つけると、飛び上がるほど嬉しくて。
逆に登場するはずだったシーンがカットされていたら、自分のことのように怒ったりして。


一瞬でも彼が出演する予定のある番組は、すべて録画した。
だって、彼が嬉しそうに教えてくれるから。

私も楽しかった。
いちばん近くで彼を応援できることが、しあわせだった。

もしかしたら、叶えられなかった私の夢も一緒に、彼に託したつもりだったのかもしれない。




『それでは、岸本一瑠さんの秘蔵映像をご覧いただきましょう!』

テレビの画面に映し出されたのは、まだ一瑠がブレイクする前のドラマ出演シーン。

学園ドラマの台詞なしモブ生徒だったり、主人公の友人の弟役で写真のみの出演だったり。

これっぽっちも秘蔵なんかじゃない。全部、私の知っているものばかり。


「……当たり前か」


こういった役をいくつも経て、オーディションがあれば片っ端から受けて、少しずつ台詞の多い役をもらえるようになってきて。

今や、有名な俳優やタレントたちと、当たり前のように画面の中で笑いあえるようになって。


そんな彼を、私はずっと見てきたから。

見ていることしかできなかったから。



ほら、もう、こんなに遠い。