『本日のゲストは、初主演ドラマも始まり今最も旬な俳優、岸本一瑠さんでーす!』


ベッドに寝そべりながら適当にテレビのチャンネルを回していると、ちょうど一瑠が出演している深夜番組を見つけた。

司会者の紹介と同時にスタジオに登場した一瑠に、客席から上がる黄色い歓声と拍手。
それに応えるように、軽く手を上げて微笑む彼。

私の指は無意識に、リモコンの録画ボタンを押す。




彼に一方的に別れを告げて電話を切った後、すぐに携帯の電源も切った。

もしかしたら、彼からまた着信が入っているかもしれない。
いや、ぜったい入ってる。

だってあんなの、彼からしてみればまったく意味不明だ。
会いに行くと言ったら、別れると言われた。……何だそれ。


(変わってないな、私も)


自分で限界を決めて、つらくなったら勝手に逃げ出す。あの頃から変わってない。全然。

彼とは、正反対だ。


だから彼に憧れた。
彼に惹かれた。
彼のことをずっと近くで見ていたいと、思った。



はじめは、役名もつかない通行人のような役ばかり。
それでも、彼のドラマ出演が決まったら大喜びして。

登場するタイミングを見逃さないように、放送日にはずっとテレビに張り付いていた。