でもこの男…秀は、一度も、私にキスしてくれたことは、なかった。
頼めばしてくれるのだろうけど…なんかやだ。負けた気分。
「由貴、悪いがドリンクをくれないか。」
「はーい、ってか、あんま絡まないでキャプテン。私、苛められるけん。」
紙コップに薄めたスポーツドリンクを入れ渡すと、長い指先で受け取り、首を傾げる天然男。
「あー、自分の人気に自覚なかのは変わらんわけね。そんうち、殺されるばい、私。」
「………何故お前が命を狙われてるか分からんが、そうなったら皆で守ろう。死なれたら困るからな。」
ホント、何考えてるのか分からない。超能力でも使えれば、話は早いのにね。
まあ、超能力なんか使えなくても分かるのは、この男の頭がバスケ一色で、私を含む、全ての女子に、アウトオブ眼中だってことかな。
他に目が行ってないだけ、マシだと思わなきゃ。



