激闘の末、県で一枠しかない本選の切符を手に入れた、熊本県立水前寺高校。
私はそこの男子バスケ部のマネージャー、2年、十六夜 由貴。
ずっと、県内の強豪校として君臨してきたけれど、やっと掴んだ初優勝、初のインターハイ本選だ。
7月の末には、東京で行われるインターハイ本選にも、勿論一緒に行く。皆の士気も高いし、万全、の筈なんだけど…。
「ギャーっ!カッコイイィィ!」
…………最近、増えたんだ。バスケ部のギャラリー。
うちには主に、万人受けする美形が二人、好みの別れるモテ部員が三人いる。
とりあえず、騒がれてる二人のうちの一人はあれ。
「ドリャァァ!!簡単には通さんけんノォ!」
ゴール下で、相手のシュートを妨害し、弾いたボールを空中でもぎ取る同級生、行雲。
バサバサと大きな目に生えた長くて多い睫毛、小さな鼻にぷっくりした唇と、女子の私より可愛い顔に、それにそぐわない184センチの長身と、長い手足、汚い熊本弁が特徴的な、学内のアイドル。
いや、正直あいつが騒がれてるのはどうでもいい。ホントに。
私が悩んでいるのは、あっち。