最後の夏休み Last Summer Days.

古いインターホンが壊れたらと思ったけど、部屋の中で鳴るばかりで何の反応もない。



ドアノブを回してみても鍵がかかっているだけだった。



「留守かな? カニクリ、鍵は持ってないの?」



合鍵をもらっておけばよかった。



でもそんなことをしたら、アタシが『ここ』を出ていった意味がないよね。



「仕事かも。どうしよっか?」



ほんとはね、少し安心したの。



「お腹空かない? この辺にファミレスないの?」



アタシの頭の中には、冷たくされたらどうしよう、しかなかった。



君なんて知らないよ、と言われたらアタシは………



「少し歩くよ?」



だからほんとは、気が楽になった。