最後の夏休み Last Summer Days.

そこにたどり着く頃にはアタシもマユカも軽い運動をしたように汗を流していた。



何も変わっていない。



色褪せた扉の前に立つと、アタシは深呼吸をする。



「ヤバイ、マユカもドキドキしてきた」



彼は、どんな顔で迎えてくれるだろう?



あの時のままの悲しい笑顔だろうか?



久しぶりのアタシを喜んで迎えてくれるだろうか?



考えると、インターホンに触れた指が動けない。



「カニクリ? 押さないの?」



アタシを心配そうにマユカが見ていた。



アタシよりも少し背の高いマユカの首筋に汗が流れていく。



「押すよ」



不安を投げ捨てるみたいな勢いでアタシは力いっぱい押した。