最後の夏休み Last Summer Days.

ねぇ、小説家。



アナタはあの時のような優しさを、今のアタシにもくれる?



「バイバイ!」



彼の返事も待たないで部屋を出た。



まだ湿っぽいローファーが階段で乾いた音を鳴らす。



「カニクリ!」



石の階段を降り始めるとベランダから小説家が呼んだ。



アタシはそのまま降り続ける。



「いってらっしゃい!」



そう言われて振り返ると、小説家は笑顔で手を振っていた。



その笑顔がまぶしくて、アタシは手を振り返すこともなく駅へと向かった。