「………だってここは、タカヒロとの思い出の海だったの。
アイツにとってはお決まりのデートコースだったかもしれないけど、
水族館も湘南の海もアタシにとっては特別だった。
だからその思い出の中で死にたいと思った。
でも―――アタシは生きてるよ。
小説家がいたおかげでアタシは生きてる。
ここがアタシの居場所じゃないかもしれない。
だけど、何かを見付けるまでは帰れない。
帰りたくないの」
アタシを見ている小説家の瞳は、最初に出逢った時と同じだった。
真っ直ぐで、深い色をしている。
「好きにしなよ」
背中を向けて歩いていってしまう小説家の後ろ姿を、アタシは追いかけられなかった。
追いかけてどんな言葉で彼に話せばいいかわからなくて、
水槽のトンネルに取り残されて、
泣いた。
アイツにとってはお決まりのデートコースだったかもしれないけど、
水族館も湘南の海もアタシにとっては特別だった。
だからその思い出の中で死にたいと思った。
でも―――アタシは生きてるよ。
小説家がいたおかげでアタシは生きてる。
ここがアタシの居場所じゃないかもしれない。
だけど、何かを見付けるまでは帰れない。
帰りたくないの」
アタシを見ている小説家の瞳は、最初に出逢った時と同じだった。
真っ直ぐで、深い色をしている。
「好きにしなよ」
背中を向けて歩いていってしまう小説家の後ろ姿を、アタシは追いかけられなかった。
追いかけてどんな言葉で彼に話せばいいかわからなくて、
水槽のトンネルに取り残されて、
泣いた。

