最後の夏休み Last Summer Days.

「そんなことないですよ」



少し照れているアタシをマユカが笑いをこらえて見ていた。



「アイツに、会いに来たの?」



でもウチらを見るサエコさんの目は、真っ直ぐで鋭い。



「………はい。いないみたいなんですけど、元気ですか?」



「あー、元気……だと、思うよ」



言いにくそうに鍵をチャラチャラとさせていた。



「何か、あったんですか?」



「実はね、―――アイツ、行方不明なんだよ」



言いながら彼女は鍵を探し始めた。



「1年くらい前かな? それからずっと。まあ、入りなよ」



と部屋のドアを開けた。



「しばらく留守にするからたまに掃除してくれって出ていったんだ」



流れ出す空気はあの頃のまま時間が止まっていたみたいだった。