結局、生徒を殺すこともなく、私はこの町へナイフを持ちこんだのだった。
それで死ぬことばかり考えていた。それ以外に使い道なんて絶対にないのだから。
話を聞いていた礼人君は、私からタオルケットをはぎ取った。急なことだったので、思わず小さく悲鳴を上げそうになった。
彼は裸の私をジッと見つめて、それから此方へ手を伸ばしてきた。
彼の指先が、私の胸をなぞって、皮膚の上に浮き彫りとなっている肋骨へと降りていく。
肋骨を触られる時、身体の内部に震動が起きて、少しだけ鳥肌が立った。
「なんで。綺麗な身体じゃん。俺、杏里のこと描きたいってずっと思っとったよ。」
文句の一つでも言ってやろうと思ったのに、うまく声が出なかった。
礼人君は、本当に最低な人だと思う。
出会った時から、私の何もかもを知っているかのように接してきた。
この人に捨てられたら、私は今度こそ生きていけないと心の底から思う。


