「お前、どうしたの?」
 

帰りがけに、靴を履き替えている際に声をかけられた。
 

一瞬振り返って、すぐに視線を逸らす。
 

「おい、シカトすんな。」
 

私のスクールバッグに下げてあるパスケースを引っ張りながら、斎藤は不機嫌な声で言った。

 
私は振り向かず、そのまま下駄箱を後にする。斎藤も自然と私の後を追って来た。
 

軽く舌打ちをしてみたけれど、何故だか泣きそうになった。
 

風に靡いて視界へ入ってくる私の髪は、見慣れないオレンジブラウン。


まるで違う誰かになってしまった気分だった。
 

「もしかして俺のこと怒ってる?」
 

背後からの言葉に、答えることが躊躇われた。
 

泣きそうなのを悟られたくなくて、俯いたまま黙って歩き続けた。