大きな声を出すことが苦手で、いつの間にか、いつも人に合せて笑っているような人間になっていた。

まともに自己主張をしようともせず、相手に気に入られようとひたすら顔色を窺う毎日。

それを虚しいとすら思わなかった。

ただ流されて、平穏な毎日を送っていられれば、それで満足だった。

時々、どうしようもない苛立ちに駆られる時もあったけれど、そんな感情すらも錯覚だと思い込んでいた。

胸の内を話せる親友もいなければ、胸の内を知る自分すらもいなくて、自分がどんな性格なのかすらまったく分からなくなっていた。

いつも私の目には一枚のフィルタがかかっていて、目の前で繰り広げられる日常を、テレビでも見るかのように眺めていた。

それで、生きていられた。