電話の向こうから聞こえる彼女の声は、いつもと少しだけ違った。

受話器越しに曇る声には、少しだけ戸惑いが感じられる。

勿論、私の声だっていつもとは違う。

幼い頃から電話が大の苦手で、つい声が強張り、低くなってしまうのだ。

愛想笑いが得意で、小学生時代からブリっ子と呼ばれてきた私も、電話に出るとまるで別人のようであった。

『今までごめん。さよなら』

お互いの緊張した会話は、彼女が吐きだしたその言葉によって終了してしまう。

五年弱の付き合いは、呆気なく、私が呆としている間に終わってしまったらしい。