トンッと、肩に水原のもたれる重みを感じる。

ダメだ… こらえろ俺っ

自分に言い聞かせるのも、なんだか自分がかわいそうに思えるくらいだ。

こらえて、泣く間 肩を貸すくらい知らん顔している方がどれだけ重荷を感じないか… だけど、俺は水原が好きだ。

だから、ほっとけない。

好きな女が泣いている。

他に理由なんてどうでもいいんだ。

「 泣くな、まだ、終わってないだろ?先が見えなくて不安で泣くより、今 周二といる事を考えろよ、な?」

水原を抱きしめた俺は、行動とは裏腹に 周二との事を前向きに考えろと水原に助言している。

この腕の中に閉じ込めているのは ずっと好きでいた親友の彼女の水原。

一人の男としてなら奪いたい、今、俺で二人をこのまま壊したい。

それが出来たら…

そんな事出来るわけないだろ。

「 俺さ… 時効だから言うよ。1年の時からお前が好きだったよ… でも、周二の彼女だから、今はほっとけない。周二は水原の気持ちが不安なのをわかってるよ、だからアイツも不安なんだと思う。
迷うなよ、じゃないと俺… 諦めた意味ないじゃん?しっかりしろよ、好きなんだろ? ちゃんと二人で前向けよ、な?」

泣きたい気持ちはある。

諦めたつもりでいて、今までずっと好きだから。

「 祥吾く… ごめっ、ありがと… ありがとうっ ごめんね… 」

「 はぁー、悔しいねマジで。周二んとこ行けよ、じゃないと… 離せなくなる 」

俺は、抱きしめていた腕をゆっくり離した。

水原は、潤む目のまま、にっこり笑っている。

これで良かった…
悔しいけど、水原は周二の彼女だ。

俺の水原じゃない。

俺も自然と笑みがこぼれる。

二人で立ち上がると、水原は俺を抱きしめてきた。

え… あ、うそ…

あまりにビックリで両手が宙ぶらりん、行き場がない。

「 ありがとう、祥吾くん。行くね 」

ギュッと、水原の腕に力が入ったのがわかった。
俺は、そんな水原の頭をポンッと小さく叩いた。