愛弓に逃げられたってどういう事だよ、赤津の野郎… 送るんじゃなかったのかよっ
俺はデパートを出て、愛弓の自宅の方へと向かった。
愛弓、ケガしてんのに!
愛弓に負けじと足の速い俺は走りながら愛弓に電話をかけた。
出ろ、出ろ… 愛弓、出ろ…
愛弓は電話に出なかった。
くっそ!愛弓…
きっと俺は過保護な同級生だ。
どうせなら過保護な彼氏なら良かった。
「 俺、走ってばっかだな、ハァ… 」
自分でも不思議なことに、息を切らしながら走る足が止まってしまった。
そして、ふと思った。
「 追ってどうすんだ… 愛弓は嫌がってんのに… 」
そう思うと足が重く、走る事ができなかったんだ。
この日を境に、俺は本当に愛弓を追いかけなくなった。
ポケットにある愛弓へのプレゼントを握りしめて…
もちろん好きな気持ちは変わりない。
でも、いつも愛弓を追いかけていたせいか、やめてしまうと後遺症が出てきた。
イライラ、いつにも増して付きまとう星香、赤津はなんら変わらない。
俺のイケメン顔はしかめっ面になっていた。
愛弓はきっとホッとしていると思うと、よけいにイライラが高まり、隣の席にすらいられない。
そんな数日を過ごし、昼休み、俺は愛弓がよく逃げて隠れていた音楽室に行った。
ドアを開けると、気がついた。
「 ここって、隠れるには難しいとこじゃねぇか?」
「 そうだよ 」
え?
いきなり背後に聞こえた声に、背中をドンッと強く押された俺は、体勢を崩して転けるように地についた。
「 なにしやがっ!? 愛弓… お前 」
「 うん、私。この音楽室、隠れるにはあり得ないでしょ?なんでか、わかる?」
「 なに、言ってんだ… 」
愛弓?
「 私もわかんない… でも、見つけてほしかったのかも 」
愛弓…?
「 追われるから、つい逃げちゃうの 」
わかるけど…
「 追われなくなって、ますます気になって… 」
なに、言ってる?愛弓…

