愛弓の一言は赤津に照れを誘った。
「 好き… かぁ、好きなのに逃げるのは なんでなんだ? 俺の頭でもわからないな 」
赤津が海翔に ため息をつきながらメールを送る。
愛弓に逃げられたと。
そのメールには気づかず海翔は星香に付き合わされてデパート内のアクセサリーショップにいた。
ああ、うんざりだ… 長いし、決まらねぇし、女ばっか。
「 海翔、海翔、どっち? リボン付か、ない方がいいか 」
俺は目をそらせて見ないようにした。
「 ちょっと~ ちゃんと見てよ!」
真ん前で商品を選べとちらつかせる星香の後ろに目に止まったものがあった。
「 おい、邪魔だ 」
シュシュの束にある下に、新入荷と書かれたポップの示すものが、愛弓を思い出させる。
ベロア生地でサーモンピンクのシュシュに紺色のリボンにパールが付いている。
柔らかな色合いで 愛弓にピッタリだとイメージで感じた。
どう使うかはわからないが、髪に使うものなのは、星香を見ていればわかる。
俺は迷わず手に取り、愛弓へのプレゼントにした。
星香はそれを見ていた。
「 海翔、やだ、私にプレゼント!」
「 んなわけねぇだろ!帰る 」
「 え、ちょっと!海翔 待って… 」
俺のポケットには愛弓へのプレゼントがある。
それだけで気分が良かった。
星香が、せめてジュースくらいとうるさく フードコートに寄った。
「 ねぇ、なんで あの愛弓がいいわけ?
私の何がダメ?」
「 お前みたいに聞かないから 」
「 意味わかんないし。愛弓なんかやめなよ、すぐ逃げるじゃん、海翔を好きじゃないよ 」
だから、俺が愛弓を好きなんだっての!
「 あのなぁ、もう 俺ほっとけ 」
「 ねぇ、今私たちカップルに見えるよね~ 」
聞いてねぇし!
俺は何となく携帯を出して見てみた。
メールか……
「 なにっ!? 」
俺は赤津からのメールを見て、思わず立ち上がり、星香をちらりとだけ見てすぐさま走った。
星香が俺を呼ぶが、俺の耳には遠い。

