「 私、入学の時遅刻して… 門を飛び越えたら海翔くんが見えて、なんていうか、カッコいいなぁってドキドキして… そしたら いつも一緒のペアで、先生には凸凹組って言われて… 私 ほんとは嬉しくて、でも、海翔くんが追いかけてくるから逃げちゃって… 好きなのに逃げたから、逃げるしかなくて… ごめんなさい 」
これと言った強い理由もなく、愛弓の説明に言葉を失い力が抜けた。
好きなのに何も言わず追いかけた俺、好きなのに何も言われないまま追われて逃げてしまって後に引けずいた愛弓。
単にスレ違い。
お互い、気持ちは同じだったのに、知ってしまえばくだらない。
笑った。
「 ごめん、愛弓… ごめんな 」
「 ううん、私もごめんね 」
そうなるとだな… 野性的本能がピンと冴える。
俺は抱きしめる愛弓の耳元で囁いた。
「 好きだ、愛弓 」
ん、とくすぐったそうに耳を埋めるように首を傾かせる愛弓。
ヤバ… 俺、愛弓にキスしてぇ
俺は愛弓の真っ赤に照れた顔が嬉しくて、可愛いくて、思わずキスをした。
あまりの驚きに愛弓は赤く沸騰した顔で俺を見つめて固まっている。
こんなの可愛い過ぎてたまんねぇだろ…
俺がもう一度キスしようとすると、寸でて、止められて愛弓が俺の抱きしめる腕からすり抜けて逃げる。
「 こらっ、愛弓!」
「 だ、だって~ ずるいよ、いきなり、反則だよ~ 」
「 待てよ、愛弓っ!お前がこんなに好きなんだから、止まれっ、俺のもんになっちまえ!行くなっ」
ピタリと走るのを止めた愛弓にぶつかりそうになるが、愛弓が両手を広げて、俺を受け止めるように抱きしめる。
「 っと! 愛弓? 逃げねぇの?」
「 私… とっくに海翔くんのものだよ 」
思いきり背伸びをした愛弓の唇が、俺の唇を優しく奪った。
そして、一目散に走り去る愛弓。
やられた…… マジやられた!
けど、逃がしてやんねぇからな愛弓。
「 愛弓ーっ!!」
愛弓が廊下の先でビクッとして、また走り出した。
そうだ、これを毎日してたんだ。
愛弓を追い回してしてた。
今は彼女の愛弓を、俺の愛弓を追いかけて掴まえるために、離さないために俺はまた、愛弓を追いかける。
そして、愛弓に渡したい物がある。
「 愛弓、見っけ。」
__________完*

