御辞儀をしたまま何秒たったか。何分たったか。混み上がる涙の波も引きそろそろ顔を上げようとしたとき先輩は口を開いた。
「俺は今でも栞菜が好きだよ。」
――――――別れの瀬戸際にそんな事を言う先輩を卑怯だと思った。
「栞菜が入部したての頃は妹みたいな感覚だったけど、俺を一途に思う栞菜に、俺は惹かれた。」
「……」
「“ごっこ”なんかじゃない。俺は本当に栞菜が好きで“恋愛”をしていた。」
また、顔を上げられなくなってしまった。
引いた筈の波が押し寄せる。
「だけど―――‥アイツは俺の中に侵食した。スランプで悩んでるとき、同じクラスのアイツは俺を励ましてくれたんだ。惹かれるのに、そう時間は掛からなかった。」
あたしと、同じだ――‥。
あたしを励ましてくれた先輩と、先輩を励ます彼女。御互い“支えと優しさ”に惹かれた。
綿飴先輩は先輩の変化に気づいたのに彼女であり、マネであるあたしは、先輩がスランプに陥ったことにすら気付かなかった。
今、知った。
綿飴先輩に目が逸らす先輩ばかりを責めるのは間違いだ。先輩を支えなかったあたしにも比がある。だからこそ――‥悔しいと思った。
あたしの方が、傍にいたのに。
こんなにも、好きだったのに。

