「優未、お弁当、一緒に食べよ…」

昼休み。隆太君は、いつも通りに私の席まできて。いつも通りお昼に誘ってくれた。

このいつも通りは、今日で最後。本当に最後なんだ。


「うん。…食べよ!」

「じゃあ、屋上行こっか」

「……うん!」

私と隆太君は、何気ない会話に花を咲かせて、屋上へと向かった。


屋上の扉をあけると同時に、冷たく乾いた風が、私と隆太君を包み込む。

「…寒いね」

「だね…」

私達は苦笑いをして、屋上の一番風が当たらない所に腰をおろした。

ここは、入り口からは誰にも見えなくて。こっちまで、ちゃんと来ないと人を確認できないところ。


「…寒いけど、いい景色だよね」

私が、ニコッと微笑むと隆太君も微笑みかえして景色に視線を移した。

「うん…。でも、来年。僕達はここにいないんだもんね…」

「あ、もう卒業か…」

来年…か…。来年は、…私は誰といるんだろう?…つい昨日までは、私と隆太君は一生一緒にいれると思っていたから…。

「まず受験だよ」

「そうだった…」

私は、苦笑いしてからタコさんウィンナーをパクッと口に含む。

「…あ、そのハンバーグ美味しそう…。ちょっと、ちょうだい……?」

「え?…うん、全然いいよ!」

隆太君は、私のお弁当箱からハンバーグをとって、半分ハンバーグを食べていた。

「……美味しい。優未も、食べてみなよ?…はい、あーん…」

隆太君は、ハンバーグを箸で挟んで、私の顔近くまで持ってくる。

私は、少し俯いてから、ハンバーグを食べさせてもらった。


「………っん…。美味しい」

「……優未のお母さん凄いね…。きっと優未も、いいお嫁さんになれるよ。…勿論、僕のね」

「……………」

私は、思わず黙りこくってしまう。だって、隆太君は遊びで言っているんだもん…。本気にしちゃダメだ…。

「…優未?……優未?」

隆太君は、返答の無い私を不思議に思ったのか、顔をのぞき込んできた。


「え?…あ、ごめんね。ぇっと、頑張るね。いいお嫁さんになれるように」

「うん。…まぁ、そのままでも、充分いいけど」

「…ぁ…うん……。ありがとう」

私は、出来るだけの笑顔でお礼を言った。隆太君は、ニコッと笑って、いきなり触れるだけのキスをしてきた。

「……………っ?!」

「…ちょっと、早めの誓いのキスだよ」

イタズラっぽく笑う隆太君に、思わず見とれてしまい、私の顔が赤くなっていった。

「優未、顔、タコさんみたいに真っ赤だよ………」

「……ご、ごめん…なさい…」

「なんで謝るのさ」

私は、隆太君のお嫁さんになれないのに…。


「ううん!なんでも無いよ!」

もしかしたら、と考えてしまう。

「……なら、良いけど……」

私は、隆太君に笑いかけてから、一気にお弁当を全部完食した。

「「ごちそうさまでした」」

「じゃあ、戻ろっか。優未」

「…あのさ、隆太君。今日、屋上で話さない?」

「うん…。いいよ」

「ありがとう。…じゃあ、教室に戻ろ!」

「…うん…」

それから、隆太君は、放課後までずっと無表情だった。



そして、ついに来た。


私の答えを出す時間が───。