「隆太君、帰ろ?」

冬も近付き、紅葉や楓が舞い落ちる秋終盤。授業終了のチャイムが鳴ると、クラスメートはぞろぞろと教室から出て行く。

「あ…、ごめん。今日、ちょっと用事があるんだ」

隆太君は、そう言うと。私の頭をなでて、切なく笑った。

「…そっか……」

付き合ってから今まで、一度も一緒に帰らなかった事が余り無かったから、ちょっと残念だな…。

「でも、11日、楽しみにしてて…」

「…11日?」

ほぇ?…私の誕生日は、3月だけど。でも、クリスマスでも、無さそうだな。

「うん。絶対、楽しい日にしてあげる」

「…うん!分かった!…じゃあ、楽しみにしてるね!…じゃあ、また明日ね!」

…正直、隆太君がいるだけで、私は毎日楽しいんだけどな……。

「うん。また明日」

私と、隆太君はお互いに手を振って別々に別れた。


「うーん…。暇になっちゃったな…」

…よし!久しぶりに、お菓子でも買って帰ろうかな!

「決まり!そうしよう!」

私は、スキップして廊下を渡る。



──この時の私は、まだあんな事が起きると知らずに。