様子を見ていると、綾女が呟いたのを耳にした。

「 ごめんね、許してね… きっとさ、立ち直るよね… 澤村くんってバスケ大好きみたいだしさ 」

俺は綾女にもう惹かれていたんだと思う。

試合には負けたが意志まで負けてしまうところだった。
それが、綾女のおかげで前を向く意志を取り戻した。

「 悪かった… 花… 」

「 え?あ… ううん 」

俺は折ってしまって一本だけ花弁が無事だったイエローサルタンを綾女に差し出した。

「 ほれ、やる 」

「 あ、りがと… 」

戸惑いながら受けとる綾女に俺は言った。

「 次は勝つから… そばで見ててくんない? 俺だけを応援してほしい 」

「 私? あの、澤村くん… 俺だけをって意味は、その… 」

「 そのつもり。俺と… 付き合え!あんたがそばにいたら意志以上に勝てる 」

俺は背が高い、綾女は背が低い。
だから下横目で綾女を見ると、満面の笑みで うん!と頷き、小指を俺に差し出した。

「 約束、勝ってね!」

俺は綾女に笑顔を向けて、少し前屈みになり、小指を絡めて言った。

「 ああ、勝つ!任せろ!」

このあとは二人で花を植えて一緒に帰った。

あれから時はすぎたが、綾女との約束はもちろん勝った。

3年の部は俺たちはもう、引退となったがバスケは続けている。

あの時、綾女に出会わなかったら、きっとバスケに正直にはなれなかっただろう。

俺は今隣にいる綾女が好きでたまらない。

俺が思い出を振り返っていると、綾女がボールを指で回そうと出来るはずもない事をしていた。
そのボールを取り上げて綾女の目の前で回してやると、えらく感動している。

「 憂里すごい!天才!でも、こうしたら続けて出来るかなぁ? 」

悪知恵が閃いたのか、ボールを回す俺の横っ腹をツンッとつついた。

「 っ! 綾女! 」

俺はボールを止め、片手で綾女の首をグッと支えるように引き寄せた。

綾女は手を地についてビックリしている。

俺は もう片方の手にあるボールを少し浮かせてクルッと回すと綾女の視線がボールにそれて、俺の視界に戻った時、俺は綾女にキスをした。

唇を離して、回すボールを落として 綾女の頬に手を添えて、また優しくキスをした。