魚、アクション

またある時、
七色の翼を持った若い魚が
言った。

「君も飛べばいいじゃないか。」

「翼がなきゃ、
飛べやしないじゃないか……。」

七色の翼を持つ若い魚は
更に言った。

「本当にそうだろうか?
そう言っている内は、
君は恐らく飛べないだろうね。
お先に失礼。」

そう言うと
七色の翼を持つ若い魚は
遥か先まであっという間に
跳ねるように飛んでは
スイスイと泳いで行った。

魚はその後ろ姿に
失礼じゃないかと
例え相手に声が届かなくとも
断固として反論すべきだったと
後悔した。

飛べないだろうと
言われたことに無性に
腹を立てた。










けれど
ふと、思った。

自分は本当に飛べないのだろうか?
と。

つい今しがた、
七色の翼を持つ若い魚が
言った言葉に注意深く
耳を傾ける。

「キミモトベバイイジャナイカ」










自分は飛べないのではなく
飛ぼうとしないだけじゃないのか
と。

無理だと決めつけて
初めから、
諦めていやしないか
と。