あいにく、エレナは令嬢たちのような図太い神経は持ち合わせていない。



「お妃様はきっとお城に戻られたんですわ。私たちはパーティーを楽しみましょう」

「パーティーには興味ない」

シルバは苛立ちを抑えながら自分の腕に絡まる手を静かに振り払う。

しかし、マリアンヌは気にした様子もなく振り払われた手を自分の頬にあて、困り顔をする。




「あら、陛下がパーティーを嫌われては困りますわ。社交界やパーティーには陛下の寵をいただきたいと着飾った女性たちが多く来ていらっしゃるのに。ほら、みんなあんなに熱い視線で陛下を見ていらっしゃるわ」

いつしか、シルバとマリアンヌの周りにはシルバの姿を一目でも見ようと押しかけてきた令嬢たちに囲まれていた。



「興味がないとは言わせませんわよ。陛下はこの国の存続のために多くのお世継ぎを残さなければならないという義務がありますもの」

そんなことはマリアンヌに言われなくとも分っている。

しかし、そこにはシルバの心を動かすような存在は誰一人としていないのだ。



「お妃様おひとりでは負担がかかるとは思いませんか?」

「どういう意味だ」

「お噂には聞いておりますが、お妃様は特殊な力をお持ちだったご様子。それにあの容姿が遺伝されては外交にも響きかねませんわ」

小声で耳打ちをされた内容にシルバはピクリと反応する。

表情の変わったシルバにマリアンヌは妖艶な笑みを浮かべて続ける。