そして、エレナを見てまるで不思議なものを見るかのように目を丸くして立ち尽くした。

エレナには男の子が考えていることは手に取るようにわかる。

恐らく男の子が驚いたように立ち尽くしているのは自分の容姿だろうと。

突然目の前に白銀の髪、銀色の瞳をもった女が自分を呼び止めれば当然驚く。

しかも今日は運が悪いことに純白のドレス、そして背景は雪ときた。

視界に入るのも眩しいくらいの白銀に男の子が驚くのも無理ない。




「こんなところでどうしたの?」

エレナはこれ以上男の子に警戒心を抱かれないようそっと歩み寄る。

笑顔を絶やさず、少しの距離を置いて男の子の目線に合わせるように屈んだ。




「外にいると風邪を引いちゃうわ。中に入りましょう」

「……戻りたくない」

とりあえず逃げられなかったことには安堵したが、新たな問題が発生する。

小さな声にも頑なな意志が垣間見え、どうしたものかと頭を抱えるエレナ。




「お名前は?」

「エド…」

エレナが優しくそう聞くと、エドは逸らしていた視線をエレナに向けて答えた。

警戒は完全に解けたようだ。




「エド、お屋敷に戻りたくない理由を聞いてもいい?」

「だって…戻ったって父様と母様はいないから」

警戒を解いたエドはエレナの問いかけに素直に答え始めた。