「私も陛下に飽きられないように努力しますね」

反論するでもなく、怒るでもなく、泣いてシルバに助けを求めるでもなく。

ただそういって儚げに微笑んだエレナに令嬢たちは小さく息を飲んで黙り込んだ。

シルバに恋する誰もが本当は自分が唯一の存在になれるなど思ってはいない。

エレナもまたその不安に駆られて過ごしているにもかかわらず、自らを高めていこうという姿勢を見せたことに令嬢たちは少なからず心を揺さぶられた。

そんなエレナの姿を目の当たりにし、一番初めにエレナに突っかかってきた令嬢が固く結んだ唇を解こうとした時だった。




「ちょっと!大変!大変よ!」

「どうしたの?」

ホールの方から令嬢が大声で叫びながら淑女の欠片もなく全速力で走ってきた。

血相を変えて走ってきた令嬢に、一同は何事かと驚く。

すると令嬢は何度か前かがみになりながら深呼吸をして息を整え、勢いよく顔を上げる。




「陛下がいらっしゃったわ!」


その顔つきは歓喜に満ちていた。

朗報を聞いた令嬢たちも一瞬で色めき立つが、続いた言葉に笑顔が消えた。