単独で外出を禁じられているエレナにとってブラントン家に行くのは唯一の息抜きの場なのかもしれない。
シルバはそれを自覚しているだけに、エレナがこうして楽しそうにお土産話をしてくれることが嬉しいのだった。
出来るならばもっとエレナの笑顔を見たいし、エレナの楽しみを増やしてやりたい。
シルバはエレナの話を聞きながら頭の端でぼんやりとそんなことを思う。
そして、ふと胸ポケットに入ったままの招待状のことを思い出した。
「そういえば昼間、オベール公爵からの招待状を受け取ったんだが…」
わざとらしくきりだしたシルバにエレナの表情から笑みが消え、真剣な面持ちになる。
「……パーティーに行きたいのか?」
「はい…あの…ブラントン夫人も出席するみたいで…」
「そうか」
シルバは短くそう返した。
途端エレナの表情が曇り、シルバの機嫌を窺うように口を開く。
「だめ…ですか?」
そう聞くエレナはもう諦めているような口ぶりだった。
いつもは諦めるよりも前に、パーティーに行きたいとも言わないエレナ。
もしかしたら言わないのではく、言えないのではないか。
そう思ったら、続く言葉が自然と出ていた。
「いや、そんなことはない」
エレナが信じられないという様子で目を丸くしてシルバを見つめる。
「最近お前には窮屈な想いをさせていたからな」
じわじわと晴れやかになるエレナの表情につられてシルバの表情も柔らかくなった。
「じゃぁいいの?」
「あぁ、気晴らしに行っておいで」

