「大体エレナは今ブラントン男爵のところに行っているはずだ。残念だったな」

「まぁいい。俺も今回はエレナを誘うために帰ってきたんじゃないからな」

自分の予定ならまだしも、エレナの予定まで頭に入れているシルバにデュークは降参だとばかりに手を挙げた。

そして胸ポケットから招待状を二通取り出してシルバに差し出す。




「ほら、毎年恒例のものだ」

「明日はクリスマスだったか」

シルバは手紙を受け取りながら溜息を吐く。

国民的行事をマリアンヌの招待状で思い出すのもいかがなものか。

口から出てきそうな皮肉を喉の奥で止めたデュークは心の中で苦笑いする。

シルバはマリアンヌからの招待状を開き、すぐに閉じた。




「一応聞くが、今年も行かないんだろ」

「当たり前だ」

「マリアンヌ嬢が嘆くな。まだお前の側室を狙っているみたいだぞ」

「勝手に言わせていればいい」

そう冷たく言い放ったそばから手紙を処分するシルバ。



「それよりもそんな話をエレナの前でするなよ。不安がる」

「はいはい。じゃぁ今年もローレンス家には何か贈り物を贈っておくからな」

昔からパーティーなどを欠席することが多かったシルバ。

パーティーに出席しない時には代わりに贈り物をおくることが習慣化していた。



「もう一通あるが、これも招待状か?」

「多分な。お前に渡すようエレナから預かったんだ」

「エレナから?」

シルバは訝しげな表情を浮かべながら手紙の封を開ける。

中から二つ折りの厚紙を取り出し、表と裏を見て肩を落とした。