ご近所恋愛(笑)


「ま、徐々に慣れていくしかないわな。頑張れよ、子猫ちゃん」


「…頑張ります」


自信は無いけれど。

でもこんな弱気ではいけない。根気強く付き合っていけば、真田さんもきっと慣れてくれるはずだ。


「別に誠はお堅いだけで悪い奴じゃないから仲良くしてやってくれよ」


「はい!もちろんで…」


バンッ


突然ドアが荒々しく開き、驚いた私は数センチ飛び上がる。もっと、開ける時には優しく開けて欲しいものだ。

ドアの方向を見ると、これはまたかなりの美形さんが立っていた。

人形のように整っている顔。少し明るい茶髪がサラサラと靡いている。涼やかな目元に、すっと通った鼻筋。

つい、見惚れてしまった。


「おい、目の前の馬鹿でかい邪魔なトラックは何だ」


「あれー?帰ってきてたの、颯くん」


「いいから俺の質問に答えろ」


相変わらずマイペースな樹さんにイライラしているのか、きつい口調で詰問している美形さん。


「まあまあ、そうカリカリすんなよ颯」


「煩い。チャラ男は黙って……誰だその女。貴様の女か?だとしたら相当趣味悪いぞ」


この瞬間、私の中でこの美形さんのイメージは嫌な奴、になった。
本人が目の前にいるというのに、趣味が悪いとはなんだ、趣味が悪いとは。

私は感情を上手く隠せる器用な人間ではない。
むすっ、としながら美形さんを睨んでいると、ばっちり美形さんの目があって…。


ギロリと、殺されるのではないかというくらいの迫力で睨み返された。


「この子は藤咲 菫っていって、今日からここに住むんだよー。ねー、菫ちゃん?」


「えっ!はいそうです!藤咲 菫と言います。よろしくお願いします」


上手く笑えているかどうか分からないが、一応笑顔を貼り付けて挨拶すると、美形さんは思いっきり顔を顰める。それも、かなりあからさまに。

だが、一応と言いたげな感じで渋々口を開いた。


「金原 颯(キンバラ ハヤテ)。必要以上に俺に近づくな」


本当にムカつく奴だ。今もしここに何か殴れる物があるなら、思いきり殴ってやりたい。

きっと、思ったことを包み隠さずに言う人なのだろう。人に嫌われるタイプだ。

バチバチと私と金原さんとの間に火花を散らしていると、ポンと泉さんが私の肩を叩いた。