俺の狭いアパートに三人が集まり炬燵布団を外したテーブルの上に大きな鍋をとコンロを置いていよいよ最後の仕上げをしていた。


鍋の中には、切った長靴が、グツグツ煮込まれている。


調味料は、一切無くて長靴を簡単に洗いお湯で煮込むだけのシンプルな物だった。


簡単に洗う時も味わいを残すために中までは洗わない。


これは、友人の橋本が、手に入れたヴィンテージ長靴だった。



橋本は、たまたま近所の工事現場跡から見つけて来たのだ。



この工事現場は、防波堤の工事だが何故か途中で中途半端な形で終わっていた。



工事が、終わったのは俺達が、まだ中学生だったはずなのでかれこれ三十年前くらいなのだ。



つまりこの長靴は、三十年前のヴィンテージ長靴だと推定して良いと思う。


黒の何処にでもあるビニールの作業長靴だがメーカーを見ると今では製造されていない物だった。


長靴マニアでそれを食べるのを楽しみにしている俺達は、メーカーには詳しく直ぐにこれがヴィンテージ長靴だと思った。